(5)
遺留分減殺請求権の行使
(イ)遺留分減殺の順序
自己の遺留分を侵害された遺留分権利者及びその承継人は、自己の遺留分を保全するのに必要な限度で、贈与や遺贈などの減殺を請求することができます。
贈与と遺贈がともになされている場合や、複数の遺贈や贈与がなされている場合、減殺請求をどのような順序で行うかが問題となります。
(a)遺贈と贈与間の順序
贈与と遺贈がともになされている場合や、複数の遺贈や贈与がなされている場合、減殺請求をどのような順序で行うかが問題となります。
(a)遺贈と贈与間の順序
遺留分減殺請求権の対象となる遺贈と贈与が存在する場合、遺留分権利者は、まず遺贈を減殺した後でなければ贈与を減殺することができません。
これは強行規定と解されており、贈与の減殺後に遺贈を減殺するとするような遺言者ないし当事者の意思表示は無効です。
(b)複数の遺贈がある場合の順序
これは強行規定と解されており、贈与の減殺後に遺贈を減殺するとするような遺言者ないし当事者の意思表示は無効です。
複数の遺贈がある場合、遺贈間での先後関係はなく、全部の遺贈がその価額の割合に応じて減殺されることとなります。
遺言者が遺言で別段の規定をしているときは、それに従います。
(c)複数の贈与がある場合の順序
遺言者が遺言で別段の規定をしているときは、それに従います。
複数の贈与がある場合、新しい贈与から減殺し、順に前の (過去の) 贈与に及ぶことになります。新旧の判断は、登記や登録の日時でなく契約の日時によって行われることとされています。
(ロ)減殺請求権の行使方法
遺留分減殺請求権は、必ずしも訴えの方法によることを要せず、相手方に対する意思表示によってなせば足ります。
後日の争いをできる限り回避し、事後の立証の便宜のため配達証明付内容証明郵便により行うべきでしょう。
また、相手方が任意に応じない場合には、訴えを提起するほかはありませんが、その場合の裁判所の管轄は、相続開始地を管轄する裁判所となります。
後日の争いをできる限り回避し、事後の立証の便宜のため配達証明付内容証明郵便により行うべきでしょう。
また、相手方が任意に応じない場合には、訴えを提起するほかはありませんが、その場合の裁判所の管轄は、相続開始地を管轄する裁判所となります。
(ハ)減殺請求権行使の相手方
| (a) | 減殺請求権行使の相手方は、減殺されるべき処分行為によって直接的に利益を受けている受遺者、受贈者となるのが原則です。 |
| (b) |
遺留分減殺請求権が行使される前に目的物が第三者に譲渡された場合
被相続人が生前に贈与をなし、その目的物が遺留分減殺請求権の行使前に受贈者から第三者に譲渡されたときには、遺留分権利者は、第三者に遺留分減殺を主張することはできず、受贈者に対して価額の弁償を請求できるにすぎません。 ただし、第三者が譲渡当時、遺留分権利者に損害を加えることを知っていた場合には、第三者に対しても現物の返還を請求することができます。この場合、第三者は価額を返還して現物の返還を免れることができます。 |
| (c) |
遺留分減殺請求権が行使された後に目的物が第三者に譲渡された場合
受贈者に対して価格弁償を請求できるのが原則です。遺留分権利者と第三者の優劣は対抗要件の有無で決せられます (最判昭35.7.19)。 |
| (d) |
遺留分減殺請求権が行使される前に目的物上に抵当権などの権利が設定された場合
遺留分権利者は受贈者 (権利設定者) に対し、価額弁償を請求することができます。但し、権利の設定を受けた第三者が遺留分権利者に損害を加えることを知っていた場合には、遺留分権利者は、その権利を消滅させることができ、受贈者から第三者の権利負担のない目的物の返還を受けることができます。 この場合、第三者は価額の弁償により権利の消滅を免れることができます 。 |
| (e) |
遺留分減殺請求権が行使された後に目的物上に抵当権などの権利が設定された場合
受贈者に対して価額弁償を請求できるのが原則です。最高裁判所昭和35年7月19日判決の考え方からすれば、遺留分権利者と第三者の関係は、対抗要件の有無で決められるものと思われます。 |